片頭痛コントロール
CLEAR
監修:獨協医科大学 副学長 平田 幸一 先生

 

アイモビーグについて

  • アイモビーグってどんなお薬?

    アイモビーグはCGRPの働きを抑えます。

    CGRPは「神経伝達物質」の一つで、脳の神経(三叉神経)などの末端から放出されます。それを受け取る側の血管や神経の末端などには、CGRP受容体といって、放出されたCGRPをくっつけるような受け皿があります。この受け皿にCGRPが結合すると炎症や痛みが引き起こされます。この痛みが、片頭痛の痛みになると考えられています。

    アイモビーグは、CGRPの代わりに受容体に結合することでCGRPの働きを抑え、炎症や痛みの発生を抑制します。

    また、アイモビーグは生物が作り出すたんぱく質を利用して製造されています。このようなお薬を生物学的製剤といいます。

    アイモビーグの働き

    • 竹島多賀夫 編著. 頭痛治療薬の考え方, 使い方 改訂2版. 中外医学社, 2016、
    • Russell FA et al. Physiol Rev 2014;94:1099-1142を参考に作成

    アイモビーグは片頭痛発作の発症を抑制するために開発されたお薬です。

    アイモビーグは、起こってしまった片頭痛を治療するお薬としてではなく、「片頭痛発作の発症を抑制するためのお薬」として開発されました。その背景には、片頭痛とCGRPの関係についてのさまざまな研究があります。

    CGRPという物質は、片頭痛患者さんでは、発作があらわれたときだけではなく、発作がなくても血液の中の濃度が高くなっているとされています1-3)

    また、発作がないときの血液や唾液の中のCGRP濃度が高いと、発作時の痛みが強くなることがわかっています4)

    これらの研究結果より、発作がないときのCGRPの働きを抑えることは、片頭痛発作の発作抑制に有効であると考えられ、アイモビーグが開発されました。

    • 1)Goadsby PJ et al. Ann Neurol 1990;28:183-187
    • 2)Ashina M et al. Pain 2000;86:133-138
    • 3)Fusayasu E et al. Pain 2007;128:209-214
    • 4)Jang MU et al. Oral Dis 2011;17:187-193

    「免疫原性」を知っていますか?

    抗体の形をしたお薬(抗体薬)は、患者さんの体の中で異物(抗原)として認識されて、体内の免疫システムに攻撃されてしまう場合があります。このときの攻撃のされやすさを、そのお薬の「免疫原性」といいます1)

    免疫原性が高いと…

    初めて作られた抗体薬は、マウスの抗体遺伝子を利用したものであったため免疫原性が高く、ヒトの体内で異物として認識されてしまい、薬剤としての効果が十分に発揮されないものでした2)

    免疫原性が低いと…

    そのため、ヒト抗体により近い抗体、つまり免疫原性の低い抗体を作る技術の開発が進み、現在では100%ヒト由来の「完全ヒト抗体」も抗体薬として活用することができます。

    アイモビーグはこの完全ヒト抗体を利用したお薬のため免疫原性が低く、免疫システムから攻撃を受けにくいと考えられています。

    • 1)くすりの適正使用協議会:これだけは知っておきたいバイオ医薬品, 2017
    • 2)Foltz IN et al. Circulation 2013;127:2222-2230
  • アイモビーグで期待される効果

    片頭痛発作の発症を抑制する効果が期待できます。

    アイモビーグはヒト抗CGRP受容体モノクローナル抗体製剤と呼ばれるお薬です。アイモビーグがCGRP受容体に結合することでCGRPの働きを抑えます。

    このお薬で、片頭痛発作の発症を抑制する効果が期待できます。

  • アイモビーグの適応となる患者さん、投与できない患者さんなど

    アイモビーグは、以下の方に使用できます。

    片頭痛の患者さん

    • 前兆の有無にかかわらず、片頭痛の発作が月に複数回以上発現しているか、慢性片頭痛である患者さんが投与対象です。
    • 最新のガイドライン等を参考に、非薬物療法、片頭痛発作の急性期治療等を適切に行っても日常生活に支障をきたしている患者さんに投与します。

    アイモビーグは、以下の方には使用できません。

    過去にアイモビーグに含まれる成分で過敏症のあった人

    以下の方は特に注意が必要です。
    使い始める前に主治医や看護師、薬剤師に相談しましょう。

    妊婦または妊娠している可能性のある人
    授乳中の人
  • アイモビーグの投与間隔

    4週間に1回、皮下投与します。

    アイモビーグはオートインジェクターというペン型の注射薬で、27ゲージという外径0.4mmほどの注射針で投与します。また、注射針は安全カバーで覆われており、投与の際に針先が見えない構造になっています。

    アイモビーグは、4週間に1回の間隔で、1回1本を投与します。

    投与予定日に投与できなかった場合は、可能な限り速やかに投与を行い、以降はその投与日を起点として4週間に1回の間隔で投与を行います。
    そのため、予定どおりに投与ができなくなった場合には、必ず主治医に連絡してください(よくある質問「Q.3 予定日に、投与ができなくなりました(投与を忘れてしまいました)。」参照)。

    また、途中で治療を中断した場合も、1回1本の投与で再開し、4週間に1回の間隔で投与を行います。

  • アイモビーグの投与方法

    医療機関で投与してもらう場合

    医療機関で医師や看護師にアイモビーグを投与してもらいます。
    通院の際は、以下のことに気をつけましょう。

    なるべく4週間に1回の間隔になるように受診する。

    自己判断で通院間隔を縮めたり、のばしたりしない。

    自分で投与する場合

    患者さんご自身で投与(自己投与)することができます。

    自己投与をご希望の方は、主治医にご相談ください。

    はじめて自己投与される方は、必ず医師などから、適切な指導を受けてください

    ご注意

    投与予定日に体調不良の際は、事前に主治医に相談してください。

    治療を中止したい場合は、自己判断せず、必ず主治医に相談してください(よくある質問「Q.1 アイモビーグの治療を中止するのはどんなときですか?」参照)。

  • アイモビーグによる治療中にご注意いただきたい副作用

    アイモビーグによる治療中には、過敏症反応、便秘、注射部位反応、傾眠などの副作用があらわれることがあります。
    これらの症状があらわれた場合は、主治医に連絡して相談してください。

    重大な副作用

    重篤な過敏症反応(発疹、血管浮腫、アナフィラキシーを含む)

    医薬品の投与により、以下のような症状があらわれることがあります。

    • 寒気、ふらつき、汗をかく、発熱
    • 意識の低下
    • 唇・まぶた・舌・口の中・顔・首が急に腫れる
    • 喉がつまる感じ、声が出にくい、喉のかゆみ、口唇周囲の腫れ
    • 息苦しい、動悸
    • 発疹、全身のかゆみ、かゆみ、じんま疹

    重篤な便秘

    腸閉塞や腸に便の塊ができるなどの重篤な合併症を伴う便秘が起こることがあり、以下のような症状があらわれることがあります。

    • 吐き気、嘔吐
    • お腹が張る、腹痛
    • 便秘が回復しないまたは悪化する

    このような便秘の多くは、アイモビーグの初回投与後にあらわれています。

    その他の副作用

    アイモビーグの国内臨床試験において、よくみられた副作用(発現頻度1%以上)は、注射部位反応(2.9%)、便秘(1.9%)、傾眠(1.1%)です。

    アイモビーグ70mgを投与した片頭痛患者さんにおける安全性の結果

    注射部位反応

    注射部位に、以下のような症状があらわれることがあります。

    • 赤み
    • かゆみ
    • 痛み
    • 腫れ

    便秘

    便秘の症状があらわれ、症状が回復しない、または悪化する場合には主治医に連絡して相談してください。

    傾眠

    投与後に眠くなることがあります。
    車の運転や機械の操作、高所での作業などを行う場合は十分注意してください。